
Webの品質は「ルール」から「運用」へ
明けましておめでとうございます。
2025年を振り返ると、Web業界全体において「品質」の捉え方が少し変わった1年だったように感じます。特にアクセシビリティの分野では、新しいルールが増えたというよりも、国内外の制度や標準の動きが重なったことで、作ったものをどう説明し、どう運用し続けるかということが、これまで以上に意識されやすくなったのではないかと思います。
2026年のスタートにあたり、昨年の重要トピックを3つの視点(海外・国内・規格)で整理し、今年の動向を考えます。
海外:WCAG 2.2が ISO/IEC 40500:2025 として承認(2025年10月)
振り返り
2025年10月21日、W3Cは WCAG 2.2 が ISO/IEC 40500:2025 として正式に承認されたことを発表しました。
ここで重要なのは急にルールの中身が変わったという話ではなく、WCAG 2.2が国際規格として参照しやすい形になった点です。
何が起きたか
WCAGが世界で使いやすい公式ルールとして扱われやすくなると、アクセシビリティをいつもの仕事の流れ(プロセス)に入れやすくなります。
- 最初に決める:案件開始時に「WCAG 2.2(ISO/IEC 40500:2025)を品質のゴールにする」と合意する
- 途中でたしかめる:作りながら「基準どおりになっているか」をセルフチェックする
- 最後に残す:確認結果をメモや資料に残し、いつでも「品質の説明」ができるようにする
2026年の視点
2026年は、詳しい人だけが分かる専門性ではなく、誰が見ても同じ基準で話せる状態を作ることがポイントになります。
社内で「どの基準を使うか」「どう確認するか」を揃えるだけで、判断のブレは減りやすくなります。
国内:合理的配慮の義務化後、「向き合い方」がより重要になった(2025年全般)
振り返り
国内では、改正障害者差別解消法の施行(2024年4月1日)により、民間企業による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。
2025年は、その前提で「実際の運用」を整える段階に入った一年といえます。
何が起きたか
合理的配慮の本質は、最初から100点のWebサイトを作ることを直接求めるというより、困りごとが生じたときに、当事者との対話を通じて調整し、可能な範囲で改善していく考え方です。
2026年の視点
2026年の現実的な目標は、一気にすべてを直そうとすることよりも、次の2つの仕組みを持つことです。
- Webサイト上で、困りごとを受け取れる窓口が見つかる状態にする
- 受け取った声を、担当部署間で共有・検討できるフローを用意しておく
対話できることそのものが、Webサイトの信頼性と品質を支える土台になります。
規格:JIS改正に向けた検討が具体化(2025年後半)
振り返り
ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)は、2025年10月30日に「JIS X 8341-3改正原案作成委員会」を発足し第1回委員会を開催したことを、2025年11月13日(更新)として公表しました。
国際規格側の更新も背景に、国内規格のアップデートに向けた検討が進められています。
何が起きたか
要するに、日本の公式なルール(JIS)も、最新の世界基準の考え方を踏まえて見直しが進む段階に入ったということです。
改正内容や時期は今後の議論次第ですが、WCAG 2.2の観点を踏まえた整理になる可能性があります。
2026年の視点
2026年は「新JISの発表を待つ」より、今のうちに最新の観点(WCAG 2.2)を少しずつ取り入れるのが堅実です。
たとえば、フォーカスの見えやすさやターゲットサイズ(押しやすさ)といった追加観点は、アクセシビリティ対応であると同時に、スマートフォン利用者を含めたすべての人にとって使いやすいUIに直結します。
今回のまとめ:2026年は「プロセス」に寄せる年へ
2025年は、法規制や規格といった外側からの要請が目立った年でした。
対して2026年は、それらを自社の開発・運用フローという内側のプロセスに落とし込むことがますます進む年になりそうです。
まずは小さく、以下のどちらか一つから始めてみてはいかがでしょうか。
- 方針ページがある場合:アクセシビリティ方針の「更新日」を新しくし、今年の改善テーマを1行だけ追記してみる
- コンテンツ更新が多い場合:デジタル庁のチェックリスト等を活用し、公開前に一度だけセルフチェックする習慣を取り入れる
参照リンク・関連資料
本記事で触れたトピックの詳細については、以下の公式サイトをご参照ください。
※注記:以下はすべて外部サイト(別タブで開きます)です。
